「若者に居場所のない国」(No country for Young Men) と題したギリシャ現代アート展をブリュッセルで観た。ギリシャ危機に関しては、この5年間、ヨーロッパ各国で毎日、おびただしい数の報道があったが、財政赤字や国債の数字のデータをいくら聞いても、ギリシャに住む人々の肉声は伝わってこない。そこを埋めていくのが、文化やアートの役割ではないか、というのがこの展覧会を企画したパレ・デ・ボザール(芸術センター)の趣旨だ。

 ギリシャ統計局によると、今年3月時点で15-24歳の若者の失業率は58.3%。2013年までに国を去ったギリシャ人は12万人といわれる。一方で、コカ・コーラやノキアがネットを使った顧客サービスセンターや研究開発センターをアテネに置くなど、外資系企業数社がギリシャでの投資を正式に発表している。その背景には、ギリシャ人の平均賃金が下がり続けていて、ギリシャ国債暴落前と比べて、英語ができる優秀な労働力を2割近く低いコストで確保できることがあるという。

 40代のアテネに住むアーティスト、カリモプロスは、「さあ、投資家が来た」という作品で、暗雲が垂れ込める空を背景に、おびただしい数の卵型のハンプティー・ダンプティーが、海から押し寄せ、岸に上がるところを描く。

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