世界政治のキーノートであるが、今回は、自民党の総裁選の話をさせていただきたい。なぜかというと、今年九月に行なわれるであろう自民党の総裁選は、世界政治の観点からも面白い現象だからである。筆者は、この三週間ほどスウェーデンにいるのだが、スウェーデン各地で話をするほとんどすべての機会に、次の日本の首相は誰になるか、なったらどうなるかと聞かれる。もちろん、私が講演したりセミナーで発言する場に来るような人は、みな日本にある程度関心を持っている人だから、当然かもしれないが、こちらが自民党総裁選の話題に触れなくても質問があるのだから、やはり、それなりに関心があるに違いない。 どうしてそうなるのかを考えてみると、いくつか理由があると思う。 まず、今回の日本の首相交代は、過去二十年近くなかった大統領選的なリーダー選びだということである。振り返ってみると、竹下内閣を成立させた自民党総裁選以来、その後のすべての新首相誕生は、みな、きわめて短期の間に緊急事態としておこった現象だということがわかる。宇野、海部、宮沢、細川、羽田、村山、橋本、小渕、森と歴代の首相の顔ぶれを思い浮かべてみたとき、誰一人として、首相になる半年前に首相就任の可能性を現実のものとして考えていた人がいないことがわかる。すべてある種の政治危機のなかで、きわめて短い期間の調整とか政略で、誕生した政権である。小泉首相にしても、森政権の破綻に基づいて急遽行なわれた総裁選の結果、首相になったのである。

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