村上逮捕が教えるもの

執筆者:2006年7月号

 良くも悪くも若者たちの目標とする人物だった堀江貴文に続いて村上世彰が逮捕された。二人の名前から彼らの親が子供に何を期待していたかがわかるような気がする。「貴文」の「貴」という字にはのちに息子が逮捕されるなどという事態は夢想だにできずに、誇り高い人物になっていてほしいという心情がにじみ出ている。九歳のとき百万円渡して株を教えた親にしても「世彰」という名には世の中から褒められるような立派な人間になってほしいという願いが込められている。 そうした親の気持ちにそむいて「逮捕」される事態に陥ってしまった二人に人権への配慮からというわけで「容疑者」という建前だけの称号をつける気になれない。したがって、もはや公共財のごとく有名な二人を呼び捨てにすることのほうが、問題に真正面から向き合うことになると考える。 終始、罪を否認し続け、裁判で争う姿勢を崩していない堀江と対照的に、村上は逮捕直前に東京証券取引所で記者会見し、容疑を認めた。大都会東京の中でも、もっとも高級な高層ビル群、六本木ヒルズに会社と自宅を保有し、週に一度は「食事をするか電話で話し合う」仲の二人が、時期はずれたものの、日ごろ乗りなれている自家用機や高級外国車ではなく、小さな国産車に乗せられて東京・小菅の東京拘置所へ運び込まれた。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。