南米サッカーの「情熱」と「狂気」に関する考察

執筆者:星野 智幸2014年6月27日

 ワールドカップ・ブラジル大会の8日目。激闘の末、コロンビアがコートジボワールを2-1で下した昼下がり、コロンビア西部のカリ市で、1人の少女が流れ弾に頭を打ち抜かれて死亡した。別の都市では、やはり少女が銃弾で怪我を負った。いずれも、コロンビアの勝利を祝って誰かがぶっ放した銃の弾が当たっての悲劇と見られている。

 コートジボワール戦後だけで、コロンビア全土で2人の死者、87人の怪我人が出たと、コロンビアのテレビでは伝えている。映像では、喜びのあまりバイクを暴走させて人をはねたり、猛り狂って人に殴りかかったり、車を揺さぶってひっくり返そうとしたりと、歓喜を暴力で表現する者たちの様子が次々と映し出される。

 また、チリがスペインと対戦する1時間前、チケットを持たない100人前後のチリ人ファンがスタジアムのフェンスを破ってメディア席に乱入、拘束されるという事件が起きた。そしてスペインに勝利の後は、チリの首都サンティアゴで暴動のようなお祭り騒ぎとなり、火を放ったり300台のバスを壊したりしたという。

 その映像を見ながら、私は28年前、1986年に行われたW杯メキシコ大会を思い出していた。やはり、メキシコが勝利した日はメキシコ中が狂喜乱舞し、ほぼ同じような光景が繰り広げられ、死者が出、そのニュース映像を見た私は、ラテンアメリカの破天荒な社会に強烈に惹かれ、やがてメキシコに渡ることになるのだ。

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