中国共産党中央と国務院は、年内に人民元のレートを調整、一ドル=七・五〇元を目指す方針を決めた。四月の胡錦濤国家主席の訪米時には、アメリカの強い元切り上げ要求を受け流したと見られていた。 だが実は、ブッシュ大統領との会談では、胡主席は「国内の改革と経済の安定的発展のために必要な措置をとる」と述べ、米側の反応を見守った。米財務省が五月十日に発表した報告書は中国を「為替操作国」に指定しなかったため、中国は「胡のメンツが配慮された」(党中央の幹部)と判断。一九八五年の日米欧プラザ合意後に円が急激に上昇したのを反面教師に、一日の変動幅を徐々に拡大しながら元高に誘導する考えだという。 二〇〇五年七月に管理フロート制を導入し元は二%強の切上げとなったが、結局、昨年の上昇率は二・五五%。今年も、五月十五日に一時、一ドル=八元を突破したが、以降、上昇率(年率)は二%を割っている。輸出産業や農業への打撃、投機資金の流入を恐れているとされるが、年内にも外貨準備高が一兆ドルを超える見通しの中国経済にとっては、過剰流動性のほうが「もっと深刻な問題」。過剰流動性がバブルとインフレをもたらせば政治的不安定を招きかねないと、危惧を強めている。

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