いちどは断念した買収構想に、いま再び取り組むのはなぜか。背景には挫折した日本戦略の立て直しがある。「シティバンクが日本で銀行を物色している」 最近の銀行界で耳をそばだてれば「シティの動き」が頻繁に聞こえてくる。現に筆者も、複数の銀行関係者から「シティバンク在日支店の人間から“相談”を持ちかけられた」との証言を得ている。 相談内容は、「地銀、第二地銀の経営状態を表面的ではなく、裏情報を含めて教えて欲しい」とか、「○○銀行の経営内容を詳細に教えて欲しい」というものだ。 銀行関係者からは「シティの人間は、冗談話のように『買収するなら三井住友クラス』と話している」という話も聞こえてくる。たしかにそれは冗談だろう。メガバンクを買収するのが不可能というわけではないが、規模が大きいため、キャッシュではなく株式交換などの手法によるしかない。ところが、日本ではその方法はまだ認められていないからだ。この“冗談話”で注目すべきは、シティ関係者が、いちどは断念したはずの「買収」をいま再び口にし、しかもメガを名指しできるほど“懐の余裕”を感じさせることだ。 米国を本拠に世界百カ国・地域に展開するシティバンクは、銀行、証券、保険の三大金融商品を一手に取り扱う世界最大の金融コングロマリット「シティグループ」の銀行部門を担っている。グループはすでに各分野で日本へ参入。日興コーディアル証券を通じて日本での投資銀行業務に、また「ディックファイナンス」や「ユニマットレディス」などのブランドで日本の消費者金融業界にも地歩を築いてきた。

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