民主主義の終点

執筆者:徳岡孝夫2014年7月9日

 日本人ジャーナリスト4、5人とアメリカ人がたしか2人、中年男だけのパーティだった。何年前か憶えていない。

 すでに六本木ヒルズが出来ていて、ヒルズの近くに住む米人W氏がベランダで焼いたバーベキューを食べながら飲み、かつ喋った。

 主客は来日したロビン・ベリントン氏という東京アメリカンセンター館長を最後に退官し、アメリカの動物園で爬虫類の飼育係をしている人で、カリフォルニア・ナントカという大蛇に噛まれた経験がある。

 話題が出尽くし、夜が更けた。私は何のきっかけか、ヘンな話を始めた。

「この間、東京駅で人と待ち合わせをしたんだ。早く着いたので、カフェ・ド・コロンビアという喫茶店に入って丸の内南口を通る人々を観察した。そのとき痛感したんだが、みなさん日本はもはやアジアの国ではないよ。ここは西欧だ。東京駅は、北京やバンコクよりアムステルダム駅に似ている。日本は西欧だ。このことを忘れちゃダメだよ」

 そう言ってから、私は夕方の東京駅で見た情景を物語った。

 

 6時少し前だから、工事中の丸の内南口は帰宅ラッシュ前だった。

 幼い女の子を2人連れた紳士が入ってきた。小さい鞄を提げている。電光掲示板に出ている新幹線の出発時刻を見て、自分の腕時計で確認し、可愛いオーバーを着た娘2人の手を引いて改札口を入っていった。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。