拉致問題:過度に高まる「期待値」の危うさ

執筆者:平井久志2014年7月11日

 日朝両政府は、北朝鮮における日本人問題を調査する「特別調査委員会」の権限や構成、調査の形式や方法などについて7月1日に北京で日朝政府間協議を行った。そして、北朝鮮は7月4日に北朝鮮におけるすべての日本人問題を調査する「特別調査委員会」を設置し、日本政府はこれに対して閣議決定で独自制裁の一部を解除した。

 

「拉致」関連情報で「集団的自衛権」隠す?

 要望書を手に、拉致被害者家族会の飯塚繁雄代表(右から2人目)、横田滋さん早紀江さん夫妻らに着席を促す安倍首相(右端)=4日午後、東京・首相官邸 (C)時事
要望書を手に、拉致被害者家族会の飯塚繁雄代表(右から2人目)、横田滋さん早紀江さん夫妻らに着席を促す安倍首相(右端)=4日午後、東京・首相官邸 (C)時事

 安倍晋三首相は拉致問題をテコに首相になったといってもよい政治家だが、今回も拉致問題を最大限に利用した。

 日朝両政府は5月26-28日、ストックホルムで外務省局長級協議を行った。そして5月29日に日朝合意を発表した。菅義偉官房長官は同日の記者会見で、北朝鮮が設置する特別調査委員会の発足までに3週間前後かかるとの見通しを示した。5月29日の3週間後は6月19日だ。しかし、実際の同委員会の発足は約5週間後の7月4日になった。拉致被害者の家族は早急な解決を求めているが、3週間後が5週間後になった理由は明らかではない。

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