「ガンジーやネールは、かつてこう言いました。世界中の風がインドを吹き抜けてゆけば良い。インドは決して吹き飛ばされることはないのだから、と」 一九九四年、当時のインドの蔵相は「フォーサイト」のインタビューに応えて、そう語っていた。その蔵相とは、九一年以来の経済自由化の指揮をとってきたエコノミスト、マンモハン・シン氏。インタビューから十二年の間にいったん野に下ったが、今や首相として政権を担う。 一方、インド経済は政権交代の影響を受けることもなく、「安定した高度成長」を続けてきた。ここ数年のGDP(国内総生産)成長率は八%に達し、規制緩和とともに海外からの投資も順調に伸びている。IT(情報技術)の分野では先進国のひとつに数えられるほどになった。 日本でもインドブームが始まっている。ニューデリーの高級ホテルの従業員は「この一年で日本の内閣の半分がここに泊まったんじゃないか」と笑う。急増する日本からのミッションを迎えたインドの閣僚が「もう調査団はいいだろう」とヒンディー語でボヤいたとの話も聞いた。 実際、十年前は百社強だった進出企業は今年六月末現在で三百社を超えた。民間の対印直接投資は現在、年六億ドル以上と見られている。〇四年九月に第一号が発売されたインド株投信は人気を集め、純資産残高の合計は一年半ほどで六千億円にまで膨れ上がった。

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