「独中同盟」は西側のリスク要因と化す

執筆者:佐藤伸行2014年7月15日
 北京で中国の習近平国家主席(右)と握手するドイツのメルケル首相 (C)EPA=時事
北京で中国の習近平国家主席(右)と握手するドイツのメルケル首相 (C)EPA=時事

 メルケル・ドイツ首相は7月上旬、中国を訪問した。メルケルの「北京詣で」は2005年の首相就任後、7度目となった。

 昨年12月に発足した第3次メルケル内閣は、与党間で合意された連立協定で「対日友好関係はドイツのアジア外交の重要な支柱」と宣言しているだけに、日本との兼ね合いから、中国との新たな「間合い」がはかられるのかどうか注目されたが、中国の人権問題に対するメルケルの言及は形ばかりの空疎なものであり、ビジネス最優先で中国との戦略的互恵関係を維持するドイツの「国是」が変わるような兆しは全く見えなかった。

 ドイツとの関係を一層強化して対日牽制カードに使う中国の思惑はあえて言うまでもないが、中国は欧州連合(EU)最強国となったドイツを抱き込むことで欧米陣営に離間のくさびを打ち込む戦略でもある。「独中同盟」は国際関係のリスク要因としてウォッチしていく必要がある。

 

「新シルクロード」

 今回のメルケル訪中に際しては、例によって経済界要人も大勢随行し、大型投資契約が次々に調印された。その最大案件は、自動車最大手フォルクスワーゲン(VW)が計約20億ユーロを投じて新たに山東省・青島と天津市の2カ所に大型工場を設置するプロジェクトだ。2017-18年に操業を開始し、それぞれ年間50万台の生産台数を見込んでいる。青島は第1次大戦まで帝政ドイツの租借地であり、中国は大戦勃発100年に当たる今年、ドイツの「旧植民地への回帰」を祝ってみせた図柄とも言える。

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