クリミアへの旅(1)キエフの逆襲はあるか

執筆者:国末憲人2014年7月15日

 ウクライナ東部で政府軍と親ロ派勢力との一進一退の攻防が続く中で、ロシアに併合されたクリミア半島について語られる機会がめっきり減った。あたかも、併合で問題が終わってしまったかのようだ。もちろん、併合自体が明らかな国際法違反であるし、これを承認しようとする国もほとんどない。一方で、長引く紛争への疲れからか、欧州の識者の間から「クリミアは仕方ない」と現状を認める発言さえ聞こえるようになった。

 ロシア併合後のクリミア半島はどうなっているのか。5月から6月にかけて、現地を訪れる機会があった。今回の取材の主な目的は、ウクライナからロシアへの国籍変更の実態と影響を調べることで、その一部は7月6日付朝日新聞日曜版GLOBE特集「揺らぐ国籍」で報告したが、その他にもクリミア半島を回り、またこれに先だって首都キエフに立ち寄ってウクライナ大統領選を垣間見た。以下、何度かにわたってその報告をしたい。

 今回のウクライナ危機は、謎だらけの紛争だ。プロパガンダ戦が激しく、ロシア側とウクライナ側で相反する情報が飛び交う結果、単純な事実を認定することでさえ容易でない。その謎を解く鍵を提示するのは難しいが、現地の動きの一端を伝える程度はできるかも知れない。

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