[モスクワ発]北朝鮮のテポドンなど弾道ミサイル七連発に、ロシアのプーチン政権は内心激怒したはずだ。七月十五日からのサンクトペテルブルク・サミット(主要国首脳会議)を前に難題を突きつけられた上、ロシアの自制要請を無視し、よりによってロシア近海に落下させたからだ。 政権に近い政治学者のグレブ・パブロフスキー氏は「金正日労働党総書記には、もうロシアの鉄道旅行はさせない。一定の制裁が必要だ」と述べた。ロシア外務省の非難声明も、従来にない厳しい内容だった。極東では北朝鮮への反発が広がっており、世論を外交に反映させないプーチン政権も、次第に対北政策を変えざるを得ないだろう。中国との「役割分担」の弱み 今回のテポドン騒動で最も恥をさらした国はロシアだった。露コメルサント紙によれば、ロシア国防省と参謀本部はインターネットの情報でミサイル発射の事実を知ったという。軍は発射や航跡を特定できず、落下地点も確認できなかった。ロシア軍高官はロシア新聞で「発射をうっかり見逃した」ことを認めた。日米両国に比べて、ミサイル探知能力が大幅に劣るという国家機密が暴露された。 もともと軍事専門家はロシアの極東方面でのミサイル探知能力は低いとみていた。「ロシアが探知できるのは米国領内だけで、アジア太平洋では衛星システムでの常時のミサイル探知能力はない」(コメルサント紙)。イワノフ国防相は全面否定したが、ロシア人記者らは「米軍が極東方面から核攻撃すれば、ロシア軍はそれをネット情報で知る」などと痛烈に皮肉っている。

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