秋の「プーチン大統領訪日」は実現微妙

執筆者:名越健郎2014年7月18日

 1990年代後半、米国のクリントン政権がコソボ問題に没頭していた頃、共和党系学者が「下手なサッカーチーム」と揶揄したことがあった。大統領以下、すべてのプレーヤーがコソボという1つのボールに群がり、外交ゲームの組み立てや戦略、守りが疎かにされたためだ。永田町や霞が関、それにメディアが、動き始めた拉致問題に群がる現在の状況も「下手なサッカーチーム」かもしれない。たとえば、もう1つの懸案である日露外交はウクライナ問題の煽りもあって疎かにされ、11月のプーチン大統領訪日は現状では延期の可能性が出てきた。

 

二兎を追わず?

 ロシア外交筋は、「大統領の訪日はテーブルの上に乗っている。2月のソチ首脳会談で合意したように、秋を前提に形式的には交渉している」としながら、「大事なのは準備のプロセスであり、岸田文雄外相の訪露や政府間委員会がなければ、前進できない」と述べた。同筋は「日本側からは外相訪露の時期について一切打診がない」とし、日本側が動かないことを暗に批判した。

 ロシアは7、8月と長期の夏休みに入り、この間外交は動かない。国連外交が得意のラブロフ外相は9月の国連総会で長期間ニューヨークに滞在し、10月まで日程は取れそうもない。9月の内閣改造で岸田外相が交代する可能性もある。日本外務省で対露政策を担当した上月豊久欧州局長が官房長に転出、林肇内閣審議官が後任に就任するなどの人事もあった。ロシア側は外相訪露を大統領訪日の前提条件と重視しているだけに、11月のプーチン大統領訪日は厳しい情勢となりつつある。

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