北朝鮮によるミサイル発射は、中国でさえ北朝鮮国内の権力争いや軍部の動向を十分に掴み切れていないことを露呈した。 石破茂元防衛庁長官を顧問とする自衛隊佐官級訪中団と面談した中国軍ナンバー3の徐才厚・党中央軍事委員会副主席は六月二十八日、「北朝鮮のミサイル発射準備には世界が注目している。我々も詳細な情報を掴んでいない。北朝鮮の国内問題であり、情報収集に努めている」と発言していた。「国内問題」という言い方には、北朝鮮の権力中枢で何が起きているのか測りかねるとのニュアンスがある。 一方、日本政府は、北朝鮮が七月四日から約一週間、同国北東部沖合に航行禁止海域を設定していたことを把握し、北朝鮮がミサイルを飛ばす方向が日本列島を越えた太平洋方面よりも主としてロシア近海であることを察知していた。また、米軍から逐一情報が提供されたため、発射後も官邸は比較的迅速に対応できたという。 しかし、民間の航空機や船舶の安全を所掌する国土交通省、海上保安庁への正式な連絡は遅れ、航空各社に警戒を呼びかける航空情報や、航行船舶に対する航行警報が出されたのは、最初のミサイル発射から約五時間後となり、情報伝達における今後の課題を残した。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。