そして郵政民営化の「堕落」が始まった

執筆者:本田真澄2006年8月号

民営化が郵政事業を堕落させるのではない。人が堕落させるのだ。高見の見物の旧郵政官僚、全特にすり寄る政治家……。 郵政民営化が“漂流”している。 来年十月の民営化に伴い、現在の日本郵政公社の事業は、持ち株会社の日本郵政と四つの事業子会社(手紙や小包を扱う郵便事業会社、郵便窓口を運営する郵便局会社、郵便貯金銀行、簡易保険を引き継ぐ郵便保険会社)に分割される。四社の事業計画と人員配置を盛り込んだ民営化郵政の「骨格」が固まるのはこの七月末。計二十六万人の職員と全国二万四千カ所の郵便局網、約二百兆円の貯金を抱える巨大な郵政事業を民営化の軌道に乗せるカギは、ひとえに「どれだけ優秀な経営者を登用できるか」だった。 昨年十一月、竹中平蔵総務・郵政民営化担当相は日本郵政の初代社長に“元カリスマバンカー”の西川善文前三井住友銀行頭取を電撃指名。その後、遅々として決まらなかった四事業会社のトップ人事は、今年六月中旬になってにわかに動き出した。郵政担当相の在任期間が残り三カ月となった竹中氏が「民営化の土台作りができなかった大臣という汚名を避けるため、六月二十二日の日本郵政の株主総会前に決着をつけようと考えた」(政府関係者)からだ。

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