問題の上海の工場での鶏肉加工の様子 (C)AFP=時事
問題の上海の工場での鶏肉加工の様子 (C)AFP=時事

 中国産の冷凍餃子事件を思い出した人も多いだろう。2007年12月から08年1月にかけて、中国・天洋食品で製造された冷凍餃子を食べた人たちが、下痢などの食中毒を起こした事件である。餃子からは殺虫剤メタミドホスが検出された。今回は日本マクドナルドなどで販売されていた中国産のチキンである。鶏肉は腐りやすいというのに、使用期限切れの肉を出荷する――そんな中国流の衛生管理に呆れかえったという声も聞かれる。

 中国の肩を持つ訳ではないが、今回の事件の雰囲気はちょっと違う。毒餃子の舞台となった天洋食品は、日本の商社を通じて冷凍食品を日本に輸出していたとはいえ、れっきとした中国の民族資本だった。当初、中国当局が知らぬ存ぜぬを決め込んだものの、10年3月に逮捕された下手人・呂月庭容疑者は中国人。工場の待遇に不満を持つ従業員で、単独犯だった。

 今度の事件の舞台になった上海福喜食品は、中国の民族資本ではない。米食品卸売会社OSIグループ傘下の中国法人なのである。しかもOSIグループは世界的に、マクドナルドやケンタッキー・フライドチキン(KFC)、ピザハットといった外食大手に対し、ハンバーガー、チキンナゲット、フライドチキンなどの原料となる肉を提供してきた。米国のファストフード・チェーンと食品卸がグルになって食の安全をないがしろにした。被害者は消費者である――そんな構図が浮かび上がる。

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