「反腐敗闘争」がいよいよ大噴火する中国

執筆者:藤田洋毅2006年8月号

「生活作風の問題」を突破口に、胡指導部はついに大ナタを振るい始めた。さもなくば共産党はもたない、と――。「昔の北京は、空は青く、川には魚が泳いでおった」――古老が若者たちに大気汚染で曇った空、ごみと廃液で泡立った川を指差しながら往時を語っていた。「病院は死から救い、傷を治してくれた」――金儲けに走る医療機関を揶揄する古老。「恋を語った後に結婚した。映画に出るのに(女優は)監督と寝る必要はなかった。子供の父親が誰か明確だった。理髪店では散髪していた。借りたお金は返したものだ」――性風俗は乱れに乱れ、理髪店は売春宿を意味する。借金踏み倒しが経営者の能力とみなされるほど商道徳は崩壊したと、古老の嘆きは止めどない。 ところが、「馬鹿は教授になれなかった。裁判所は理を説いた。凡人は幹部指導者になれなかった。役人には袖の下が通じなかった」の一節で若者たちは大爆笑、「ウソでしょ!」と古老の言葉を遮った。教育界ばかりでなく、正義の最後の砦だったはずの公検法(公安・検察・裁判所)までが、いまや党・政府の幹部以上に腐敗している。あまりのひどさに、まともだった時代があったなど、若者には信じられないというオチだ。北京で流行中の小咄である。

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