ジャカルタのスンダ・クラパ港の船上で当選演説を行ったジョコウィ氏 (C)AFP=時事
ジャカルタのスンダ・クラパ港の船上で当選演説を行ったジョコウィ氏 (C)AFP=時事

 インドネシアの大統領選挙は、国民目線に立ちオープンな政治を進めるという新しい政治指導者像を提示したジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)と、強い指導力で国民を先導する伝統的な政治指導者像を提示したプラボウォ・スビアントという対照的な2組の候補者が、最後まで激しい争いを展開した。7月9日に行われた投票では、ジョコウィが6.3%の得票差でプラボウォを破り当選を決めた。庶民出身の候補が元軍人のエリート候補を破って、インドネシアの第7代大統領に就任することになったのである。

 

最終盤までもつれた選挙戦

 前回筆者は、プラボウォ陣営の攻勢で選挙戦が大接戦となっていることを報告した。選挙戦も最終盤に入ると、それまで統率がとれているとは言い難かったジョコウィ陣営も態勢を立て直し、危機感をバネに巻き返しに出た。プラボウォ陣営のばらまき政策に対抗するため、ジョコウィ陣営も、村落や農業部門への開発資金拠出や中小企業支援、公務員、国軍兵士、警察官などの待遇改善、イスラーム寄宿学校支援など、あからさまに支持獲得を目的とする公約を急遽発表した。陣営の目玉政策である貧困層向けの教育費や医療費の無償化をボランティアたちが戸別訪問で有権者に説明し、中下層の支持を取り戻そうとする戦略もとられた。また、著名な芸能人や音楽家たちにSNSを使ってジョコウィ支持の声を拡散させるなど、支持回復に向けた懸命な努力が続けられた。

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