スイス人頭取が再生させたドイツ銀行の反攻

執筆者:石山新平2006年8月号

「グローバルバンク」として唯一生き残ったドイツ銀行。だが、金融界全体を見れば、「最大勢力」の再編が積み残されたままだ。[フランクフルト発]二〇〇四年春、ドイツのシュレーダー首相(当時)はシュパーカッセと呼ばれる貯蓄銀行の全国大会で、ドイツの金融機関再編の必要性を強調していた。遅れているドイツの金融機関を統廃合し、経営をスリム化しなければ国際競争に生き残れない。そんな危機感を顕にしていたシュレーダー氏の当時の予測は「国際的に活躍する銀行はドイツに一つ、よければ二つ」という厳しい内容だった。 それから二年余り。前首相の予言はほぼ現実になったと言っていい。唯一、民間銀行最大手のドイツ銀行だけが国際的に通用する銀行として何とか命脈を保ったが、二位だったヒポ・フェラインス銀行(HVB)はイタリアのウニクレディトの傘下に入り、三位だったコメルツ銀行は地域銀行としての色彩を強めることで生き残りを目指している。ドレスナー銀行は保険大手アリアンツに買収され、ようやく黒字になったとはいえ、いまだにリストラ進行中。ドイツの四大銀行という呼称はもはや完全に過去のものとなった。 そして、「よければ二つ」の候補が出てくるはずだった州立銀行など公的金融機関の再編は思うように進んでいない。州立銀行首位のバーデン・ヴュルテンベルク州立銀行(LBBW)は同八位のラインラント・プファルツ州立銀行(LRP)を昨年買収した。これにより国内で実質五位と、民間銀行に肩を並べる資産規模を誇るところまで拡大し、事業の国際化などをぶち上げているが、まだまだ国際競争の荒波に耐えられる存在とは言い難い。この先、公的金融機関の再編がさらに進み、ドイツで二つ目のインターナショナル・バンクができるかどうかが、今後の焦点といったところだ。

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