過激に予測したとしても現実は更に大きな変動への兆しを隠そうとはしないという、われわれの洞察力の不足が確かめられるようになったのはいつからのことか。経済実態の変貌、柔軟性の欠如が明らかな制度枠組み、動揺する指導者の理念、などの各々は歴史の局面ごとに観察されよう。しかし経済、制度、指導者が一気通貫で不安定化したときには、些細な事件をきっかけにしてでも、歴史の軌道が大動揺をきたすことがある。のちに振り返れば2014年の夏は、歴史の単位で回顧が必要になり、展望の視座を確立しようとすれば、憂慮をともにする人々にも具体的な関与姿勢が求められる時節入りとなったのではないか。

 

BRICS銀行をどう捉えるか

 7月15日、新興5カ国(BRICS)の首脳会議で握手する(左から)ロシアのプーチン大統領、インドのモディ首相、ブラジルのルセフ大統領、中国の習近平国家主席、南アフリカのズマ大統領(ブラジル・フォルタレザ)(C)AFP=時事
7月15日、新興5カ国(BRICS)の首脳会議で握手する(左から)ロシアのプーチン大統領、インドのモディ首相、ブラジルのルセフ大統領、中国の習近平国家主席、南アフリカのズマ大統領(ブラジル・フォルタレザ)(C)AFP=時事

 米ニューハンプシャー州のブレトン・ウッズで第2次大戦後の国際経済システムが論じられてからちょうど70年が経過する。第1次大戦の勃発からは100年という区切りになるが、IMF(国際通貨基金)とWTO(世界貿易機関)の前身のGATT(関税と貿易に関する一般協定)の骨格が成ってからの70年も、随分な時の積み重ねとなる。IMFの出資比率において中国(4.0)がベネルクス3国(4.28)に劣後しているという現状からすれば、BRICS銀行(新開発銀行)やAsian Infrastructure Investment Bank(AIIB、アジア・インフラ投資銀行)の設立に中国政府が走ろうとすることを、経済の現実、制度の硬直性、そして指導者たちの拘束された立場という組み合わせに憂慮を深める研究者陣営に属する者からすれば、無下に批判することもできまい。

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