「相互否定」激化ではるかへ遠のく中東和平

執筆者:立山良司2006年8月号

“権力を握ったテロ組織”ハマスの挑発に、イスラエルは強烈に報復。悪循環が止まらない。 イスラム過激組織ハマスがパレスチナで政権を握ったことで、イスラエル・パレスチナ関係には構造的な変化が起きている。イスラエルはハマスによる兵士拉致事件を機に「ハマスの基盤壊滅」を目指し、イスラエル南部のパレスチナ自治区ガザでの軍事作戦やパレスチナ自治政府閣僚の身柄拘束など強烈な圧力を加えている。これに対しハマスも拉致した兵士の解放に応じず、イスラエル南部の都市にロケット砲を発射するなど対決姿勢を強めている。一九九三年のオスロ合意以降の中東和平プロセスは、対立を繰り返しながらも、イスラエルとPLO(パレスチナ解放機構)の相互承認を基盤としてきた。しかし今あるのは、互いに相手の存在を受け入れず、むしろ抹殺しようとする相互否定主義だ。 衝突の直接のきっかけは、六月二十五日にハマスなど三組織の混成部隊がガザ南部に掘ったトンネルを通ってイスラエル軍監視所を襲撃し、イスラエル兵士二名を殺害、一人を拉致したことだった。イスラエルは二十八日、ガザ南部に軍事進攻し、連日、発電所や首相府の建物、ハマスの拠点などに激しい攻撃を加えている。七月六日以降、ガザ北部や東部でも本格的な軍事行動を開始し、相当数のパレスチナ武装勢力を殺害した。この間、エジプトが積極的な仲介工作を行なったが、奏功していない。

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