この期に及んでも、政治家や官僚には少子化対策の重要性がわかっていない。「空文」を平気で出す哀しきシロウトたち。 世界一の少子高齢化社会に突入した日本。だが、政府は“司令塔不在”のままで、少子化対策は迷走を続けている。 政府は六月二十日、「新しい少子化対策」を決定した。だが、その対策なるものは、単に四十項目の施策を羅列しただけで、実行に移すための財源確保策や、具体的な制度設計は何ひとつ記されていない。政府内からさえも「『メッセージ性が高い政策を』という安倍晋三官房長官の掛け声とは程遠い。とても抜本策とは言えない」と、早くも非難の声があがっている。 この少子化対策に盛られた施策を大別すると、(1)子育て家庭への「経済支援」、(2)仕事と育児の両立を目指した「働き方の見直し」、(3)一時預かり施設を増やすなど「子育て環境の整備」、(4)子供や家族を持つことの重要性の再認識を促す「意識改革」――が一応の四つの柱となる。 だが内実は、取りまとめ役となった猪口邦子少子化担当相の調整力不足が影響し、政府内が分裂して二つの少子化対策案が出る異常事態に陥った上に、自民党と公明党もそれぞれ提言をまとめた結果、これら四つの案をツギハギしたものに過ぎない。しかも各方面からの反発を避けるため、提言は曖昧な表現に薄められた。

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