NHKを変えられなかった「無策の五百日」

執筆者:神谷二郎2006年8月号

「もう疲れた。辞めたいよ」 NHKの橋本元一会長は、最近しきりにそうこぼしているという。 NHKが組織改革を求められる発端となった不祥事(紅白歌合戦のチーフプロデューサーによる番組制作費の私的流用)が発覚してから二年。独裁批判を浴びた海老沢勝二前会長が辞任してから一年半――二〇〇五年一月の就任以来、橋本会長は、公共放送としての「自主自律」や全職員の一割にあたる千二百人の人員削減などを柱とする『新生プラン』を発表し、「デジタル時代のNHK懇談会」や「NHK“約束”評価委員会」を設置するなど、変革の体裁は整えてきた。 だが、この五百日間で本質的なことは何も変わっていない。 六月十九日、「デジタル時代のNHK懇談会」が一年間の議論を終え、報告書を提出した。受け取った橋本会長は「公共放送・NHKの存在意義と役割を明確に指摘して頂いた」と自賛したが、それもそのはず。「低調な議論」(NHK中堅幹部)の果実は、「公共放送NHKの再生如何が民主主義の将来を左右する」「NHKの民営化や放送有料化は、すべきではない」「受信料には公共空間を活性化させる社会的コストの意味合いがある」などという“阿諛追従”のオンパレードだった。

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