「個人情報保護法」が官僚に悪用されている

執筆者:鶴岡憲一2006年9月号

何のことはない、自分たちの「不都合」を隠すためだった。鳴り物入りで施行された法律は、国民の真の利益とはなっていないのだ。 国民のプライバシー保護を目的とする個人情報保護法が施行されたのは昨年四月のこと。実際の運用をみれば、やみくもに個人情報を隠す法の濫用ぶりが目立つ。“歪んだ保護”は官民の分野を問わないが、特に問題なのは、官僚が都合の悪い情報を隠すために自ら作った保護法を悪用していることだ。今年七月二十六日、法を所管する内閣府に対して、日本弁護士連合会が法改正や運用監視機関の設立を求める意見書を提出するなど、早くも法改正の動きが出始めている。本当に必要なのは、官僚本位で作られた法体系の見直しだ。     * 保護法の濫用ぶりを最も浮き彫りにしたのは、昨年から今年にかけて全国の中高層マンションなどを舞台に発生した二つの問題だった。 まず、今年六月に東京都内のマンションで高校生を圧死させたシンドラー社製のエレベーターをめぐるトラブルだ。同じタイプのエレベーターの設置状況を開示するよう求めた監督官庁(国土交通省)に対し、同社は「個人情報の保護」を理由にリストの提供を拒否。世論の激しい非難にさらされて初めてデータを提出した。その後、全国に設置された八千八百三十四基のエレベーターから次々と不具合が判明した。

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