水谷建設事件の多すぎる「点と線」

執筆者:伊藤博敏2006年9月号

東京地検特捜部は再度の捜査で逮捕にこぎつけた。今後、どれだけの「ルート」が解明されていくのか。 脱税容疑で逮捕された水谷建設元会長の水谷功容疑者(六一)は、政治家と暴力団にとって使い勝手のいい「貯金箱」だった。 三重県桑名市を本拠とする年商四百五十億円の土建業者。重機土木のトップ企業とはいえ一般には無名で、その秘匿性が政治家にとっては使いやすく、細かいことに注文をつけずドンブリ勘定でカネを出す度胸の良さが暴力団には好ましかった。 七月八日に幕を開けた水谷建設事件は、「地方の土建屋」の脱税事件とは思えぬ拡がりを見せている。 あくまで現時点での捜査の筋を並べるだけでも、(1)佐藤栄佐久福島県知事周辺ルート、(2)東京電力福島第二原発ルート、(3)北陸電力志賀原発ルート、(4)北朝鮮ルート、(5)中部国際空港ルート、(6)北川正恭元三重県知事周辺ルート、(7)松山政司参院議員周辺ルート、という具合だ。 しかも、脱税事件ながら捜査の主体は東京地検特捜部。それも脱税摘発を本業とする財政経済班ではなく、贈収賄担当の直告一班が捜査にあたっており、先に列挙した以外に名前は明かされていないが大物政治家ルートも存在する。

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