筆者は8月前半ウクライナを1週間訪れ、首都キエフと南部のオデッサに滞在した。東部で戦闘中とあって、キエフは活気がなく、物価高やエネルギー不足が市民生活を圧迫していた。革命の聖地であるマイダン広場のテントや瓦礫の撤去が進み、ポロシェンコ政権はこれからが正念場だ。今後、ウクライナの最新情勢を報告するが、今回は死者298人を出した7月17日のマレーシア機撃墜事件の後日談を紹介したい。オランダが率いる国際調査団が近く、事件1カ月をめどに暫定的な調査報告書を公表する予定で、狂気の蛮行が改めてクローズアップされそうだ。

 

激しい情報戦

 マレーシア機撃墜について、ウクライナ政府は発生当初から、「東部の親露派がロシア軍の協力で実行した国際テロ犯罪」(ナイダ保安局長官)との主張で一貫している。保安局は事件直後、記者会見を行い、「飛行機を撃ち落とした」とする親露派勢力2人の電話盗聴記録を公表。ブークと呼ばれるSA11対空ミサイルを積んだトラックが撃墜後、逃走中とされる写真を公開した。

 親露派勢力「ドネツク人民共和国」のストレルコフ国防相が撃墜直後、「ウクライナのアントノフ輸送機を撃墜した」とソーシャルメディアに書き込み、その後消去されたことも伝えられた。米政府も、親露派支配地域でロシアの提供したミサイルによって撃墜された「強力な証拠」があると強調した。

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