品質を売り物にしてきただけに、欠陥放置は論外の愚挙。ナンバー1企業の名が泣いている。 世界一に向け、快走を続けるトヨタ自動車に異変が生じている。米国で起きたセクハラ訴訟、鳴り物入りで日本に逆上陸した高級車ブランド「レクサス」の不振。そして、最も深刻なのがリコール(回収・無償修理)の急増とその最中に起きたSUV車の欠陥放置事件だ。 二〇〇三年に世界第二位の米フォード・モーターと肩を並べてから、わずか三年で首位の米ゼネラル・モーターズ(GM)を射程にとらえる急成長を果たしたトヨタ。北米市場で日本車が支持を集め、トヨタが賞賛される最大の理由は「壊れにくい車」という品質への絶対的な信頼にあった。しかし、一連のリコール問題で、これまで築いてきた品質神話は大きく揺らいでいる。 思えば、既にあの時、奥田碩会長(現取締役相談役)は今日の事態を予感していたのかも知れない。 〇四年十一月一日、日本経団連会長を務め、社業に距離を置いていた奥田氏は自ら経営説明会に立ち、トヨタの弱点として「伸びきった兵站」と「社員の驕り」を指摘し、慢心が目立ちはじめた社内の雰囲気の引き締めを図った。だが、その警鐘は届かなかった。一九九五年八月から九九年六月までの奥田社長時代に推進された、経営のグローバル化と拡大路線への転換。これが良くも悪くも現在のトヨタの始まりである。

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