文人経営者「森稔」を待ち受ける正念場

執筆者:杜耕次2006年9月号

とかく注目を集めた六本木ヒルズにとどまらない森ビルの拡大路線。ゼロ金利の時でもメインバンクは二の足を踏んだが……。 日銀の「ゼロ金利政策」の解除でビジネス界に何が起きるのか。誰もが注目するのは巨額の借金を抱える企業への打撃である。日本航空=約二兆円(リース債務を含む)、西武ホールディングス=一兆一千七十三億円、ソフトバンク=九千五十三億円……。主要企業の有利子負債(二〇〇六年三月末)ランキングをみていくと、財務リスクが常々喧伝される社名が上位に並ぶが、金融機関関係者が「実はあそこも」と言いながら要注意銘柄としてリストアップする会社がある。「六本木ヒルズの大家さん」として名高い森ビルだ。 鳴り物入りの開業から三年。東京の新名所となった六本木ヒルズは良くも悪くも多くの話題を提供してきた。まず思い浮かぶのが六歳の男児が犠牲となった〇四年三月の大型自動回転扉の死亡事故である。前年末に同種の事故が起きていたにもかかわらず対策を怠っていたとして警視庁は業務上過失致死容疑で捜査に着手。「六本木ヒルズ運営本部長」を兼務していた社長の森稔も事情聴取を受けたが、結局森ビル側で刑事責任を問われたのは事故当時の担当常務と部長にとどまり(〇五年九月に両者ともに禁固十カ月、執行猶予三年の有罪判決)、一時は「引責辞任は必至」といわれた森は窮地を脱した。

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