七月十一日火曜日の夕方、帰宅ラッシュの通勤列車を狙った爆弾テロがムンバイ(ボンベイ)で起きた。爆弾は車輛や駅の構内など七カ所で爆発、死者は百九十人を数え、負傷者も七百人を超えた。 だが、インド駐在の日本人ビジネスマンは、「ロンドンやマドリードでも同じようなテロが起きている今、インドはテロへの懸念の面でも先進国並みだというだけ」と語り、テロがインドの経済や社会に大きな影響を与える可能性は薄いと読む。実際、ムンバイ証券取引所の株価は、テロ後、一時的に下げたが、すぐに戻した。 事件後、イモヅル式に国内で逮捕された直接の容疑者は計八人。アフリカのケニアでも一人が拘束されている。いずれも、パキスタンに本拠を置くイスラム過激派「ラシュカレ・タイバ」の活動家とされるが、テロは決して“輸入品”ではない。 そもそもインドはテロの“先進”地域。インドの首相はこれまで二人暗殺されているし、無差別テロも珍しくはない。ムンバイ市内では一九九三年のビル爆破、二〇〇四年のバス爆破などで死者が出ており、昨年十月には首都ニューデリーでも同時多発爆弾テロが起きたばかりだ。 とはいえ、テロの起きる背景は、ビジネスの観点からも無視できない。宗教や地域、階層などさまざまな面で、やはりインドは非常に多様で格差も大きいのだ。今回の列車テロの対象になった車輛が一等車だったのは決して偶然ではない。

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