欧州連合(EU)による独占禁止法の厳格な運用が、世界規模の音楽事業再編に大きな衝撃を広げている。 ソニーと独ベルテルスマンが二〇〇四年に共同出資で設立したソニーBMGについて、EUの欧州司法裁判所(第一審裁判所)が事業統合を無効とする判決を決定。合弁事業の継続に黄信号が出た。音楽事業にとどまらず、巨大企業の再編では欧州での「法的リスク」が看過できなくなってきた。 事の発端は七月十三日にEUの第一審裁判所が下した判決。欧州委員会が〇四年に承認したソニーとベルテルスマンの音楽事業統合について「あまりにおざなりな判断だった」とし、当時の欧州委員会の承認を無効と判断した。 これに対し、欧州委員会は第一審裁判所の判決を不服として控訴する考えを示しながらも、両社の事業統合への承認作業をやり直す考えを表明。音楽業界は騒然となったが、これに加えて、七月下旬にはレコード世界第三位の英音楽大手EMIと第四位の米ワーナー・ミュージックがEU第一審裁判所のソニーBMGに対する無効判決を理由に、検討中だった経営統合を断念すると発表。衝撃はさらに広がった。 音楽レコード業界は米ユニバーサル・ミュージック(世界第一位)とソニーBMG(同二位)、EMI、ワーナーの四社が実にシェアの七割以上を占める寡占市場である。〇四年のソニーとベルテルスマンの事業統合で再編機運に弾みがつき、EMIとワーナーが統合に動き始めていた矢先に、EU独禁法の無効判決が冷や水を浴びせた形だ。

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