香港デモ:返還以来最大のクライシスに

執筆者:野嶋剛2014年9月30日

 香港トップを選ぶ行政長官選挙の方法をめぐり、デモ隊が香港中心部を占拠している。9月28日には催涙ガスによる排除が行われたが、29日も占拠は続き、アジアの金融センターである香港で機能マヒが起きつつある。人民解放軍の投入もしきりに噂されるなか、香港の情勢は緊張の度合いを増している。

 

「親中派」しか選べない改革案

 これまでの経緯と背景については、今月、本サイトの記事「強まる『反中愛港』:香港は『台湾化』に向かうのか」(2014年9月8日)で詳しく書いているので、参照していただけると有り難い。一言でいえば、民主選挙を導入するはずだった2017年の行政長官選挙について、香港の「高度な自治」を否定するような、自動的に民主派を排除する選挙方式が中国から示され、香港人は怒っているのである。

 この状況を、香港のあるコラムニストはこんな比喩を使って言い表していた。分かりやすかったので紹介したい。

 「ランチで3つのメニューが示されました。『牛肉卵あえ御飯』と『卵かけ牛肉御飯』と『牛玉御飯』です。一見、選択できるように見えますが、あなたが口にするものは必ず、牛肉と卵がライスの上に乗った食事になります」

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