人口十一億人を抱えるインドには、大小、千五百万の小売店舗がひしめき、四千二百万人以上が従事する。その市場規模はざっと三千五百億ドル。インド産業連盟(CII)などは、これが二〇一五年には六千億ドルにまで拡大すると予測する。小売分野こそインドで最後に残された有望市場なのだ。 一九九〇年代からの経済成長でインドの個人所得は都市、農村ともに着実に上昇。各種研究機関の調査では、年収七百五十―三千ドルのいわゆる中間層は三億人を超え、今後も年率一〇%前後の勢いで増加する見通し。家電や食料品、日用品などの消費も急拡大している。これこそ、米ウォルマートや仏カルフールなど大手小売の幹部がインド詣でを重ねている理由だ。 だが、インド政府は外資への小売市場開放には極めて慎重だ。インドの小売業は約九五%が個人や家族の零細経営。「外資の上陸で大量の失業者が出る」として開放に反対する左翼政党の主張は、政府も無視できない。 政府が外資の進出を足止めしている間に、インド小売市場には国内大手が相次ぎ進出を開始した。最大の財閥であるリライアンス・グループは六月末、今後五年で五十四億ドルを投資し、スーパーやコンビニ、ハイパーマーケット(大型スーパー)など一万店を全国千五百都市に展開し、五十万人を雇用するという空前絶後の計画を発表した。

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