M&Aで業容を拡大し、売上高一兆円を狙うまでになった日本電産。“スーパーニッチメーカー”が直面する課題とは――。「ただ一人の日本人として指名されたことは大変光栄だ。さらに努力を続け、限りない成長発展を期し世界に貢献していきたい」 今年三月、米の有力金融情報誌『バロンズ』で「世界の名経営者ベスト30」に選出された永守重信(六二)はそうコメントした。永守は京都に本社を置く東証第一部上場企業「日本電産」の社長で、「平成の再建王」の異名もとる人物。一九七三年にわずか四人のメンバーで創業してから約三十年間でHDD(ハードディスク駆動装置)用精密小型モーターの世界シェアトップにまで登りつめただけでなく、これまで買収した二十三社を人員整理せずに再生させた点が評価されての受賞だった。 あくまでもメーカーとして、買収先企業の事業を立て直すだけでなく経営者や従業員も育成する――。永守は、ライブドアの堀江貴文やM&Aコンサルティングの村上世彰らが煽ってきたマネーゲームの手段とは一線を画する「日本型M&A(企業の合併・買収)」の先駆者・実践者として囃されてきた。 そしていま、「二〇一〇年度売上高一兆円、グループ十万人の企業への飛躍」という目標を掲げている。現在のグループ売上高は五千三百六十九億円(〇六年三月期)で、従業員数は約七万八千人。目標を達成するためには、あと四年足らずの間に売上げを倍増させなければならないが、永守は「今の増収ペースなら八千五百億円まではいける。残りの千五百億円はM&Aを考えている」と自信をみせる。

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