性犯罪前歴者に英会話を習いたい?

執筆者:徳岡孝夫2006年10月号

 十年前にコロラドで「美貌の六歳」を殺した犯人が、いまごろバンコクで捕まるなんてまさかと、まず疑った。だがコロラドからのAP電によると、故ジョンベネちゃんの父親はテレビに出て「ほっとしました」と語ったという。殺された娘の親なら、警察から何か確実な連絡を受けているだろう。やっぱり真犯人かなあと、私は半信半疑の状態になった。 結局、最初に疑ったのが正しかったようである。身柄をタイから米国に移送された容疑者ジョン・マーク・カー(四一)は、固いアリバイの証言があるし、だいいちコロラド州ボールダーに住んでいたラムジー家とは縁もゆかりもない、面識すらない男である。話にならない。 カーの弁護人が殺人現場で採取してあるDNAとの照合を拒否したとの報もあったので、ひょっとするとホンモノか、いまも記憶に残るフットボールの元スター、O. J. シンプソンの妻殺し事件に似た法廷サーカスが始まるのかと再び興味が湧いたが、調べるとやはりDNAは一致せずと判り、空振りの三振で話は決着した。 アメリカの警察が、海外逃亡中の犯人を嗅ぎ付けたのではない。逮捕に到るきっかけは、カー自身の知人宛てメールに、ジョンベネを「私が殺した」と言わぬまでも、それを匂わす一節があったからだった。そんなアヤフヤな「証拠」で、アメリカの裁判所はよく逮捕状を出すものである。

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