国論分裂「親北か親米か」かまびすしい韓国

執筆者:黒田勝弘2006年11月号

[ソウル発]韓国は北朝鮮による核実験強行の事態に直面し、ますます国論分裂の様相を呈している。政府は対北制裁派の外交通商、国防部、国家情報院と、消極派の大統領官邸、統一省が対立状況にあるが、それ以上に北朝鮮の核実験をめぐる議論が結局は「親北か親米か?」になっているからだ。韓国にはこの期に及んでも北朝鮮擁護論が意外に根強い。いや、この期に及んだからこそといおうか。 昔から北朝鮮の韓国に対する世論工作の基本は「反米民族主義」である。したがって核実験に対しても「ここまで事態を悪化させた責任は、北朝鮮に対する制裁強化と直接交渉拒否の米国にある。悪いのは米国だ」との見方が韓国社会には結構、広く存在する。 政府レベルでいえば、今のところさすが盧武鉉大統領はそこまでは言っていないが、韓明淑首相はそう公言しているし、与党議員たちにもその声は強い。大統領だって就任直後の訪米の折、北朝鮮の核開発(当時は動きだったが)に「一理はある」と言っているのだから、本音はそれに近いだろう。 韓国では今回の北朝鮮の核実験を機に、当然ながら対北宥和政策である、いわゆる「太陽政策」の当否が議論になっている。これは野党や保守派の批判攻勢によって、大きな政治的争点になりつつある。金大中政権以来の一方的な対北支援策である「太陽政策」は北朝鮮に“軍資金”を与え、核開発まで招いてしまったのではないか? というわけだ。

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