「核保有した北朝鮮」への現実的対応

執筆者:田中明彦2006年11月号

 北朝鮮の核実験に対して何をすべきか。北朝鮮の核実験が成功したのかどうか本稿執筆時にははっきりしておらず、北朝鮮の保持する核兵器の能力は、いまだに定かではない。しかし、はっきりしていることは、現在の能力が不十分だとすれば、北朝鮮は能力向上を目指すさらなる核実験をためらわないだろうということである。核兵器を搭載した弾道ミサイルを北朝鮮が配備するという状況になるには、まだ時間があるのかもしれないが、交渉による北朝鮮の核廃絶が実現しないとすれば、早晩、その状況が来るとみなければならない。そうだとすると、これに対する安全保障面での日本の対応は、当面、二つということになろう。 第一は、日本に対する北朝鮮のいかなる攻撃もアメリカへの攻撃に等しい、つまり日本が自ら防衛するのみならず、アメリカが全力で反撃するとの意図を明確にすることである。核兵器についていえば、アメリカの「核の傘」は日本を覆っているとの認識を北朝鮮に持たせることによって、北朝鮮によるいかなる核使用も抑止するとの姿勢を明確にすることである。核実験直後の官房長官の声明は、「日米間で日米安保条約のコミットメントを確認し、更に強化していくことで一致をした」と語り、実質的にこの趣旨を述べているが、より明確なコミットメントがアメリカ側から発表されるよう働きかけ、現実化させることが必要であろう。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。