筆者は幼少期をペルシア湾岸に位置するサウジアラビアのダハランで過ごした経験を持つ。短い期間であったが、以来サウジアラビアには特別な思いを抱いている。そのため、2008年にサザンメソジスト大学に職を得て以来、本大学タワーセンター政治学研究所上級研究員を務めているロバート・ジョーダン元駐サウジアラビア大使と知己を得たことは望外の喜びである。

 ジョーダン氏は、中東ビジネス専門の弁護士であるが、2001年の9.11テロの直後に民間登用で駐サウジアラビア大使に任命されたことからもわかるように、ジョージ・W・ブッシュ大統領の信頼の厚かった人である。テキサスを代表する法律事務所であるベーカー・ボッツに所属し、事務所創業者のジェームズ・アディソン・ベーカー氏の孫にあたるジェームズ・ベーカー元国務長官に対する中東問題の指南役でもある。

 これまでも中東情勢について事あるごとに多くの知見を得てきたが、先月17日にタワーセンターでインタビューをする機会があったので、ジョーダン氏との議論に基づいて、混迷を深める中東情勢を考察してみたい。

 

オバマ演説に対する評価

 インタビューを行ったのが9月10日のオバマ演説の1週間後だったので、演説への評価を聞いてみた。ジョーダン氏によれば、「予想の範囲内」であるが、「野心的な(ambitious)アジェンダをどう実行していくかがカギになる」という答えであった。

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