北朝鮮を七月に襲った大水害の死者・行方不明者は三万人を超え、食糧二百万トンが失われた――平壌に駐在する国際機関関係者は、こうみている。 北朝鮮は死者・行方不明者を千人程度としているが、関係者によれば、実際にはその三十倍以上とされ、被災民も二百万人近いという。食糧二百万トンは、北朝鮮が最低でも必要とする年間食糧需要量(約五百三十万トン)の三割以上で、今冬に飢餓が到来する恐れがある。 一部の地方では伝染病が広がっているほか、道路や鉄道が寸断されたままで、食糧輸送も困難な状態。二百万人の餓死者を出したとされる一九九〇年代半ばの食糧危機再燃もあり得る状況だ。 平壌の外交筋は北朝鮮の核実験予告について、「食糧危機を突破するため、国際関係の緊張を高め、政権維持に利用している」と指摘していた。今回の核実験発表も、水害による国内体制脆弱化を“強行突破”するのが目的のひとつという見方だ。 北朝鮮が水害後、昨年から拒否していた世界食糧計画(WFP)の食糧支援の受け入れに転じたことも、食糧事情の厳しさを物語っている。 一方で、米国の金融制裁によって貿易決済が困難になり、今年の貿易額は大幅に縮小する見通しだ。核実験で強まる制裁と水害の打撃で、金正日政権が今冬を乗り切れるかどうかが、今後の注目点になりそうだ。

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