対「イスラーム国」の空爆をイラクからシリアへと拡大してから1カ月が過ぎた。「イスラーム国」の大規模な武器集積施設の破壊により、支配地域の急速な拡大の阻止には役立っているとされるが、当初の予想通り、地上軍の派遣なしに「イスラーム国」の打倒は困難な見通しだ。米国のあからさまな地上軍派遣は、依然として米国の国内で多数の支持を得られない模様であり、現地と周辺諸国の同盟国・同盟勢力を募ることが急務だが、それがうまくいっていない。焦点となっているのがトルコの動向だが、トルコはシリア北部に飛行禁止区域を設定し安全地帯を設けることを米主導の多国籍軍の軍事行動への参加の条件としている。当面は米国がこれを認めそうにない。ここからNATO(北大西洋条約機構)にも当初から参加し、米国にとって中東で不可欠な同盟国であるトルコとオバマ政権の間に深刻な亀裂が入っている。

 対シリア空爆への参加をひっきりなしに催促する米国に対して答えるかのように、トルコは10月13日に空爆を行った。ただし目標はシリア北部ではなく、トルコ南東部のクルド武装勢力に対してだった。トルコにとっての最重要課題はクルド人武装勢力であって「イスラーム国」ではない、という、米国に対する強烈な回答と言えよう。

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