国軍兵士に選挙権を与えるか否かをめぐって、インドネシア国内で熱い議論が続いている。インドネシアではこれまで、兵士は政治的中立を保つべきだとの考え方から、長い間、選挙権も被選挙権も与えられていなかった。 ところが、二〇〇九年の総選挙で返り咲きを狙うメガワティ前大統領率いる野党、闘争民主党が「兵士にも選挙権を認めるべきだ」と口火を切り、これに与党ゴルカル党も同調、反対する市民団体との間で論戦に発展している。 同国軍は陸海空あわせて約三十万人の兵力をもつ。独立の父スカルノ大統領を実父にもつメガワティ党首が、兵士票をテコにして捲土重来を期するのは明らか。 これに対し、国軍出身のユドヨノ大統領は公式には賛否を表明していないが、「軍では上官の命令は絶対。兵士が個人の考えで自由に投票できるかどうかは疑問」として、投票権を与えることには消極的な立場とされている。 一九九八年にスハルト長期独裁政権が崩壊した後も、インドネシアでは国軍の支持が政権の命運を握る旧弊が完全に払拭されたわけではない。だが、兵士に選挙権を与えた場合、直接選挙である大統領選で軍の意向が大勢を左右しかねないことから「民主化に逆行する」と学生組織や宗教団体は反対しており、国会での議論の行方が注目されている。

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