C型肝炎訴訟の重荷がのしかかる。さらなる合併で体力を増すか、それとも企業イメージ回復のため「ミドリ十字」を切るか。悩みは深い。 近年、製薬業界では世界中で合併が相次いだが、三菱ウェルファーマほど、合併、社名変更が相次いだ会社も珍しい。なにしろ、一九九八年に旧吉富製薬と旧ミドリ十字が合併し、新生・吉富製薬が誕生すると、二年後の二〇〇〇年に社名をウェルファイドに変更。さらにその翌年には、東京田辺製薬と三菱化学の製薬部門が合併して誕生した三菱東京製薬と合併して、三菱ウェルファーマに変る。そのうえ、昨年十月には三菱化学と持株会社「三菱ケミカルホールディングス」を設立するという目まぐるしさだ。「こうクルクル社名が変ったのでは、一体、どこの製薬会社だったか分からない。処方箋を書くときに困りますよ」 と、ある総合病院の医師も同社の変遷には呆れ顔だ。 この三菱ウェルファーマの名前が新聞紙上で大きく報道されたのは、C型肝炎訴訟を巡ってである。「二〇〇二年、血漿分画製剤でC型肝炎に感染した患者が国と製薬会社を相手に東京、大阪、福岡、仙台、名古屋で集団訴訟を起こしました。当時の製薬会社はミドリ十字と日本製薬。その五件の訴訟のうち、今年六月に大阪地裁で国と製薬会社の責任を認める判決が出、八月には福岡地裁も原告十八名中十一名の損害賠償請求を認める判決を下した。ところが、ミドリ十字が見当たらない。慌てて探したら、合併を繰り返し、三菱ウェルファーマに変っていた。合併はミドリ十字の名前を消すために違いないと思った」(社会部記者)

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