黒海を挟んでロシアとも向かい合う東欧のブルガリアとルーマニアが、二〇〇七年一月に欧州連合(EU)に新たに加盟することが決まった。両国は汚職対策や組織犯罪防止への取り組みが遅れており、一時は来年の加盟が危ぶまれていたが、EUの行政機関である欧州委員会が最終的に条件付きで来年の加盟を承認した。EU加盟が正式に決まったことで、両国に対する企業の設備投資や工場移転などが加速するのは確実だ。 海外企業から見たブルガリアとルーマニアの魅力は人件費などのコストの低さ。労働者の月間平均賃金は西欧諸国の五分の一以下とされる。この低賃金を生かして、仏ルノー・グループのダチアはすでにルーマニア国内で大衆車「ロガン」を生産。低価格の小型車として西欧諸国で人気を集めている。現地で株式会社を設立する際の資本金が少額で済むことも企業にとっては大きな利点となる。 ブルガリアとルーマニアに投資する企業にとって、これまでは政府高官らによる汚職が不安の種だった。入札や行政手続きで不利な扱いを受けるリスクがあるためだ。司法制度が整っていないという問題もあった。 今回のEU加盟のポイントは欧州委員会が継続的に両国を監視下に置くところにある。欧州委員会は汚職対策や法体系の整備などについて進捗状況を定期的に点検する仕組みを導入。改革が進まない場合は両国への補助金の削減や打ち切りなどの制裁措置を取る。海外企業にとっては欧州委員会の監視は投資先としてのブルガリアとルーマニアの信頼性の向上につながる。

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