「疫病」がもたらす歴史の転換

執筆者:関裕二2014年11月11日

 西アフリカの風土病・エボラ出血熱(エボラウイルスによる全身性の急性熱性伝染病)が、世界を震撼させている。体内で血栓が生まれ、血流が滞り、複数の場所から出血する。伝染力が強く、致死率の高い恐ろしい病気だ。2014年8月には、WHO(世界保健機関)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言している。

 なぜ今、エボラ出血熱なのだろう。人類の歴史は、病気との闘いでもあった。時代の節目には、必ずといってよいほど、疫病が蔓延したのだ。とすれば、現代は人類にとって大きな転換期なのだろうか。

 

縄文後期の謎の人口減

 病理史学者の立川昭二氏は『病気の社会史』(岩波現代文庫)の中で、文明が病気をつくり、文明の交流が病気をもたらすと言い、さらに、病気そのものに、「歴史的性格」があると指摘している。たしかに古代日本でも、病気と歴史は、深く関わりをもっていた。

 日本列島は島国だから、大陸と比較すれば、人びとの往き来は、限られていた。海の民の活発な交流はあったが、日常的に大量の人間が往来していたわけではない。だから病気に対する抵抗力は低く、ひとたび新たな伝染病が侵入すると一気に広まって被害が拡大した可能性が高い。

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