WTO交渉が再開されるとしても、大幅な前進は望み薄。出遅れたFTA戦略を練り直さなければ日本の貿易の前途は暗い。 九月二十二日に予定されていた安倍晋三内閣の組閣が二十六日に延期され、農林水産省や経済産業省の通商担当者は、ほっと安堵のため息をついた。中川昭一農水相(当時)の海外出張が可能になったからだ。 七月下旬に「凍結」が決まった世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)に関して、オーストラリアやブラジルなど農産物の主要輸出国で構成するケアンズ・グループ(十八カ国)は、九月二十―二十二日にオーストラリアで閣僚会議を開き、本来はメンバーではない日本、米国、欧州連合(EU)を招待するという「変化球」を投げてきていた。 ケアンズ・グループは、農産物貿易を阻害する輸入国での農業補助金の撤廃や農産物の関税の大幅削減を主張している。十一月に中間選挙を控えた米ブッシュ政権は、農産物の輸出拡大の姿勢をアピールする絶好のチャンスと見てスーザン・シュワブ通商代表を派遣したが、EUは「単なる政治ショー」と相手にせず早々に欠席を決めた。日本としては、新ラウンドの早期再開に積極姿勢を示すだけでなく、米国との良好な関係を維持するためにも出席しておきたいところだが、組閣と重なっては有力閣僚の派遣は難しい。

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