財務省から予算編成権を奪う――実現するなら痛快だが、官僚たちは船頭の多い新政権の弱点を突こうと虎視眈々。「安倍さんは『霞が関のルールをぶっ壊す』という姿勢をアピールしたかったのだろうが、本当に政策が回って(実現して)いくのかね」 安倍晋三首相が組閣を終えた九月二十六日の夜、「大臣以外」の顔ぶれをながめた有力経済官庁の次官経験者はそうつぶやいた。 米ホワイトハウス型の官邸主導を掲げる安倍政権は、五人に増員した首相補佐官をほとんど政治家で固め、これまで首相官邸から霞が関官僚の秩序を仕切ってきた事務担当の内閣官房副長官に、霞が関を去って十年以上経つ七十二歳の元大蔵官僚、的場順三氏を起用した。事務職の官房副長官は、内閣や与党と霞が関各省庁をつなぐ官僚の元締めだ。「皇室問題も含めた政策全般を統括する」との理由から、歴代、厚生労働省や総務省など旧内務省系の有力次官OBが就き、その下の副長官補を財務省出身者が占めて財政や経済政策を仕切るというのが、これまでの「霞が関の秩序」だった。 ところが、的場氏は旧大蔵省(財務省)で主計畑を歩み、主計局次長まで務めたとはいえ、大和総研理事長など民間経験が長く、「他(官庁)はもちろん、うちともとうに関係が切れていた」(財務省幹部)。

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