パナマ運河拡張は世界に何をもたらすか

執筆者:ロバート・ライト2006年12月号

十月二十二日、パナマ国民は拡張計画にゴーサインを出した。建設百周年に向けて新たな歴史のページが開かれようとしている。[ロンドン発]たとえ事前にどれほどの知識を蓄えていようとも、南北アメリカ大陸の中央で太平洋と大西洋を結ぶ八十キロの水路、パナマ運河の実物に接する体験には比べるべくもない。 運河に並行して走るパナマ鉄道の車窓に突如として現れるのは、アメリカ東海岸に輸出される日本車を満載した長さ二百メートルもの貨物船のマストや、荷を降ろして中国に戻るコンテナ船の姿だ。運河を包むうっそうとした熱帯雨林が景色をいっそう劇的なものにする。 だが、森の中から姿を現す船がどれほど巨大に見えようとも、世界の海運会社は「パナマックス」サイズの船では飽き足りなくなっている。パナマックスとは、一九一四年にアメリカが建設したパナマ運河の水路を通ることのできる船の最大の大きさ――幅三十二・三メートル、長さ二百九十四・三メートル、吃水十二・四メートル――である。 アジアからの輸出が急激に伸びるにつれて、コンテナ船会社は船を巨大化させてきた。その結果、一九九〇年には、パナマ運河を通航できないほど大きな船が建造されるようになった。今では、建造中のコンテナ船の半数以上がパナマックスを超える大きさとなっている。

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