「核の成果」を強弁する北朝鮮に迫る食糧危機

執筆者:草壁五郎2006年12月号

まさしく「貧者の核爆弾」。核大国になったつもりで六カ国協議に復帰、金融制裁の解除を狙うが、核で人の腹は満たせない。[ソウル発]「今回の核実験の成功は、強力な自衛的国防力を渇望してきたわが軍隊と人民の無敵の力と勇気を百倍にし、わが方を圧殺しようとする米帝とその追随勢力に激しい鉄槌を下した歴史的出来事である」 十月二十日に行なわれた「核実験成功を歓迎する平壌市十万人軍民大会」で、朝鮮人民軍の金正覚人民武力次官はそう強調した。この平壌大会を皮切りに、全国の主要都市で核実験実施を祝う大会が開かれ、さらに各地の企業所や、協同農場、大学などでは核保有国になったことを誇る集会が次々ともたれている。 平壌市内には「核保有国となったプライドを持って帝国主義者たちのあらゆる挑戦を堂々と拒否しよう」などと書かれた横断幕が大仰に掲げられている。 北朝鮮は十月三日に外務省声明という「政府発表」で核実験を予告した。ところが、九日に実験の実施を発表したのは朝鮮中央通信の「報道」だった。北朝鮮外務省のスポークスマンは十一日になってようやく政府としてそれを確認し、再実験の可能性に言及した。そして、国内の祝賀ムードを作り出すのはさらに遅れ、二十日以降に始まっている。この間、朝鮮労働党創建記念日(十月十日)や「打倒帝国主義同盟」結成八十周年(同十七日)などの大きな記念行事があったにもかかわらず、核実験への言及がなかったのはあまりに奇妙だ。

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