EUとトルコの回避すべき「正面衝突」

執筆者:アダム・セージ2006年12月号

[パリ発]一九二二年のオスマントルコ帝国崩壊以降、トルコはヨーロッパに寄り添うことで経済発展やNATO(北大西洋条約機構)加盟、そして躓きながらも「民主主義」といった果実を手にしてきた。その結果、アメリカやヨーロッパが他のイスラム諸国の「お手本」として挙げる政教分離の国ともなった。 しかし、EU(欧州連合)加盟問題をめぐっては、トルコとヨーロッパの関係は急速に冷えつつある。 相互不信と口論の中でいま問われているのは、サミュエル・ハンチントン・ハーバード大教授が冷戦の終わりに著書で予測した「文明の衝突」を避けるために、トルコが仲介者としての役割を果たすことができるか否か、という重大な問題である。 もしも欧州が門戸を開くのを待つことにトルコが疲れ果ててしまったら(世論調査には既にその兆候がある)、ドイツのヨシュカ・フィッシャー元外相が指摘するように、トルコは欧州以外に盟友を求める誘惑に駆られるかもしれない。もしそれが現実のものとなれば、欧米にとってトルコはお手本どころか、イスラム教と民主主義・市場経済との間には埋めることのできない溝があることを証明する「悪例」となってしまうとフィッシャーは警告する。

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