二〇一二年までに年率一〇%の高度経済成長を目指すインドの最重要課題が、エネルギーの安定供給だ。インド計画委員会は、国内の商業エネルギー需要が今後二十年間で現在の二・八倍に急増すると試算するが、原油需要の七〇%を依然輸入に頼っており、慢性的な電力不足も一向に解消されていない。 そこで、インド石油天然ガス公社(ONGC)などインドの石油各社は、世界各地で積極的な油田・ガス田開発に乗り出し始めた。ロシア・サハリンやスーダン、ベトナムで原油や天然ガスを生産中のONGCは、ナイジェリア、リビア、キューバと、米欧メジャーの進出が遅れたアフリカや中南米などで相次ぎ開発利権を獲得。現在日量約十三万バレルの海外自主開発原油を、二〇年までに同四十万バレルに拡大する計画だ。 インド政府も、活発な資源外交で局面打開を図る。ロシアには東シベリアやバレンツ海などの資源獲得を目指して急接近。中央アジア・カザフスタンにも、IT(情報技術)分野での協力などと引き換えに石油利権を獲得すべく働きかけている。 原子力発電所建設にも全力を挙げる。現在建設中の原発七基は〇八年までに相次ぎ完成し、計二十二基の総発電量は現在の二倍の約六千七百メガワットに拡大する。政府は二〇年までに計二万メガワットの原発を新設する計画で、日米欧や国内の民間企業にも門戸を開放する方針だ。これにはもちろん、インドへの原発技術や核燃料の供与を容易にする米印民生用原子力協定の早期発効が大前提となる。

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