上海リニア“人体実験”記

執筆者:竹田いさみ2006年12月号

 東京から中国・上海までのフライトは三時間。福岡からはわずか一時間四十五分。新聞や週刊誌を丁寧に読んでいると、気がつけば上海到着とあいなる。日本から上海へのアクセスはとてもいい。全日空は一日六便、日本航空は八便、これに中国や米国のエアラインが加わる。さらに札幌、仙台、福島、富山、広島、岡山、小松、松山、北九州、長崎、鹿児島、沖縄などの地方空港からも複数のフライトが上海を目指す。中国東方航空は日替わりで航空機を日本の地方空港に送り込み、地方のニーズ掘り起こしに躍起だ。 上海の浦東国際空港の名物はといえば、世界初の実用リニアモーターカーだ。“空港と市内の三十キロを八分で結ぶ”が謳い文句で、瞬間最高速度は四百三十一キロ。片道五十元(約七百五十円)だが、航空券を見せると四十元になる。 空港から市内中心地までタクシーで一時間(約百五十元)かかるため、“八分の誘惑”にとびつきたくなるのは人情だろう。空港のリニア駅はさぞかし観光客やビジネス客でごった返しているだろうと、恐る恐る改札口に足を運んでみた。長い渡り廊下を歩き、リニア駅のターミナルビルに到着すると、あに図らんや、人影はまばらだ。観光客目当てのショップが並ぶが、店員は手持ち無沙汰の様子。肝心のリニアも、車内はガラガラ。その後も何度かリニアに乗ってみたが、満席だったことは一度もない。日本企業も進出している杭州まで将来的に路線を延ばす計画もあるが、頓挫しかねない。より深刻な安全性の問題まで浮上してきたからだ。

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